写真納品は、ファイルを渡したら終わりなのか
SNS向けとBtoCの納品で、ファイルが届くことと相手が写真を使えることの間にある距離に気付き、納品用の画像ビューアーを作ることにした理由。
写真の納品には、長くGoogle Driveの共有URLを使ってきました。クライアントによっては、SS&C Intralinksのような指定されたセキュアな共有環境へアップロードすることもあります。
撮影データ一式を渡すことが目的なら、今でもそれで十分です。実際、BtoBの案件で「撮影データを一式納品して完了」という場合は、現在もGoogle DriveのURLを送っています。
変わったのは、SNS向けの撮影とBtoCの納品です。
この2つでは、ファイルを渡すことと、相手が写真を使えることの間に、少し距離があることに気付きました。
SNSの写真には、使いたい時間がある
SNS向けの撮影では、納品の速さに意味があります。
イベントや撮影が終わった直後には、まだその場の温度があります。その日のうちに投稿したいこともあるし、数時間後には別の話題へ移っていることもあります。
だからSNS案件では、撮影した写真を現像するだけではなく、4:5など実際に使うプラットフォームに合わせた比率で書き出して納品することがあります。
その状態まで作っているのに、最後にGoogle Driveのフォルダを渡す。
もちろん、それでも写真は届きます。でも相手がやりたいことは、ファイルを管理することではありません。写真を見て「これ使おう」と決めて、その画像をすぐに使うことです。
だったら、その「これ使おう」からダウンロードまでを短くした方がいい。
それが、自分で納品用の画像ビューアーを作り始めた理由のひとつでした。
保存したい写真と、見たい写真は違う
もうひとつ、実際の納品を続ける中で気付いたことがあります。
以前撮影したインフルエンサーから、「あのときの写真、まだありますか?」と聞かれたことがありました。
そこで初めて、納品した写真が相手側で必ずしも継続的に管理されているわけではないことを意識しました。
考えてみれば当然でもあります。何十枚、何百枚と納品された写真を、すべてiPhoneへ保存しておきたいわけではありません。SNSで実際に使うのは、その中の何枚かです。
だからといって、こちらがクライアントの写真を恒久的に管理するアセット管理まで引き受けたいわけでもありません。そこまでやると、撮影と納品とは別の実務になります。
必要だったのは、その中間でした。
一定期間、写真を見ることができる。必要になったら探せる。使いたい写真だけダウンロードできる。でも、恒久的なアセット管理サービスにはしない。
その境界に、納品用の画像ビューアーを置くことにしました。
公開期間を1か月にしている理由
公開期間は、原則1か月にしています。
SNS向けの写真は鮮度が重要で、それ以上を恒久的に保管することを目的にはしていません。家族写真のようなBtoCの案件でも、納品後は手元に保存してもらうことを前提にしています。
だから納品時には公開期限を伝え、期限内に必要な写真を保存してもらいます。
期限があることは、制約であると同時に、この納品方法が何をする場所なのかを決めているものでもあります。ここは保管庫ではなく、写真を見て、選んで、取っていくための場所です。
Google Driveをやめたわけではない
納品用の画像ビューアーを作るために、Google Driveを手放したわけではありません。画像データはGoogle Driveに置いたままです。
変えたのは、クライアントが触る面です。ストレージとしてGoogle Driveを使い、その手前に、写真を見るための薄いインターフェースを置きました。
URLを開けば写真が並んでいる。クリックすれば大きく見られる。必要ならその場でダウンロードできる。気になる写真にはスターを付けられるし、セレクトしたファイル名をコピーしたり、CSVとして書き出したりもできます。
必要だったのは、高機能な写真管理サービスではありませんでした。「見る → 選ぶ → 取る」、その距離を短くすることでした。
Frame.ioは、この用途には少し重い
既存のサービスを使う選択肢もあります。
ただ、自分の用途ではFrame.ioのような制作・レビュー環境は少し重い。映像制作でレビューや承認を行うなら、その機能には意味があります。
でも、インフルエンサーへのSNS用写真の納品や、BtoCで家族写真を渡す場面では、そこまでの仕組みは必要ありませんでした。追加のサービスに料金を払い、クライアントにも新しい操作を求めてまで導入したい機能でもありません。
URLを開く。写真を見る。欲しいものをダウンロードする。自分に必要だったのは、それくらいでした。
納品方法は、納品後に何をするかで変わる
現在は、案件によって納品方法を分けています。
BtoBで撮影データ一式を渡せば完了するなら、Google Drive。SNS向けの急ぎの案件や、BtoCで写真そのものを見てもらうことが重要なら、納品用の画像ビューアー。
どちらが優れているという話ではありません。違うのは、納品された後に相手がすることです。一式を受け取って社内で管理するのか。その場で写真を見て、使うものを決めるのか。
後者なら、納品の終点を「ファイルが届いたところ」に置かない方がいいと考えるようになりました。
写真をアップロードした。
URLを送った。
ファイルが届いた。
それで技術的には納品は完了しています。でも、SNSのような案件では、その先にまだ、
「見る」
「決める」
「ダウンロードする」
「使う」
があります。
自分が短くしたかったのは、ファイル転送の時間だけではありません。
撮影した写真が、相手にとって使えるものになるまでの時間でした。